音高の高さは声帯の振動数により決まり、
振動数が増加すれば高いpitchとして、
振動数が減少すれば低いpitchとして感覚されます。
通常子供や女性は高く、男性の声は低いpitchです。
一方各人の発声しうる最も低い声と最も高い声との範囲をその人の声域といいます。
通常、成人ではおよそ2オクターブです。
人間の出しうる声の範囲はおよそCis-a2(69〜880Hz)で約4オクターブにわたっている。
しかし個人についてはみれば約2オクターブ程度である。
この声域を(声楽)的に種類別にしたものが声種あるいは声位と呼びます。
人間の声はソプラノ/Soprano:伊(女性の高声)、アルト/alto:伊(女性の低声)、テノール/tenore:伊(男性の高声)、バス/ basso:伊(男性の低声)の4つのパートに分かれます。
声楽ではさらに、高低の中間の声域を設けて表1のように分類されます。
[表1]
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女性 |
男性 |
高声 |
ソプラノ |
テノール |
中声 |
メゾソプラノ |
バリトン |
低声 |
アルト |
バス |
オペラでは高声に主役が配されることが多いので、ソプラノ、テノールではその声質によって表2のように分けれることもあります。
[表2]
ソプラノ |
a.レッジェーロ |
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|
b. リリコ |
・レッジェーロ ・スピント |
テノール |
c.ドラマティコ |
d.コロラトゥーラ
a. レッジェーロ [leggiero:伊]
軽やかな高音が出て、転がすようなコロラトゥーラの技法が特徴な声です。
b. リリコ[lirico:伊]
一般的なソプラノやテノールの声です。その中で細分化され、軽めの声をリリコ・レッジェーロ、や強めの声をリリコ・スピントと呼ばれます。
c.ドラマティコ[drammatico:伊]
重く強い声で、ドラマティックな表現に向いている声です。
D.コロラトゥーラ[coloratula:伊]
速いフレーズやトリルなどの華やかで技巧的な音型装飾のことです。また、そのような歌唱を示します。特に、高音でその技法を発揮するソプラノはコロラトゥーラソプラノと呼ばれ、モーッアルトのオペラ「魔笛」で歌われる「夜の女王のアリア」などの聞き応え十分の名曲があります。
ロッシーニらのベルカントオペラでは、あらゆる声種にコロラトゥーラが求められ、例えば「チェネレントラ」にはアルトのコロラトゥーラが堪能できるアリアがあります。
a.〜c.の分類は中声、低声にも一応当てはまりますが、あまり使われていないようです。
また、その声に適した役どころの面から分類されます。これは声そのものよりも、歌手のキャラクター・イメージが表出されるものです。主な声のキャラクターを表3で示します。
[表3]
・エロイーコ[eroico:] 勇ましい英雄的な表現に適している
・ブッフォ[buffo:伊] 喜劇的な表現に適している
・セリア[seria:伊] 荘厳な表現に適している |
女性の高音域の声種です。華々しく目立つことからヒロインの役柄となります。
ソプラノとアルトの中間的音域の声質です。
落ち着きのある響きで表現力に富んでいるので、歌曲の分野で活躍する歌手も多いです。
この声の持ち役は「カルメン」のタイトル・ロールが代表的で、キャラクターが際立つ役柄が与えられます。
また、中性的な声質であることから少年役(ズボン役)も担います。
女声の低い音域のパートです。
落ち着いた深みのある音色であることから、母親、乳母、女占い師などの役どころがあります。
誤解されやすいことに、高い声が出ないからアルトと思われがちですが、パートとはあくまでも音色による分類なので、個々の歌い手が持つ音域とは異なっています。
現在では女声の低声であるアルトと同じ意味に使われることが多い言葉です。
しかし語義は低音を示す接頭語「コントラ」がアルトに着くので、
アルトよりもさらに深みを持った声が出る声域のことです。
男声の高音域の声種です。
多くの作品で男性の主役(ヒーロー)が配されています。
元来男性は高い声が出にくく、テノールの魅力はなんと言ってもその高音にあります。
そのため作曲家たちはテノールにどこまで高音を出させるかという歴史もあります。
テノールとバスの中間的声域です。
多くの男性はこの声で、ことに声楽初心者はこのパートから学習を始め、
テノール、バスへと転向していく人もいます。
男性の最も低い声域です。
父親、国王、司祭など重厚な役柄にふさわしい声ですが、
時にバッソ・ブッフォ[basso buffo:伊]という、滑稽な役どころに適する性格や声を持つバスも存在します。
歴史的にロシア、東欧から世界的バス歌手が輩出され、
ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」などバスが活躍するオペラが作られました。
その他の声種......
成人になる前に去勢された男性歌手。
かつては教会内で女性が歌うことは禁じられていたため、成人してもボーイソプラノの声を保つために行われていました。
成人男性ですので、声は力強く音域も広かったので、17〜18世紀のオペラ上演になくてはならない存在でした。
カストラートが禁じられた後に出現した、女性ソプラノ並みの高い音域を出す男性歌手のことです。
男性は裏声(ファルセット)で高音域を出すことが可能ですが、以前は声量不足のために活動の場は教会に限られていました。
教会の建物は音響面で優れていたからです。
20世紀後半、バロック期の唱法の研究により、胸声を使う歌唱法が復活し、オペラの上演にもカウンターテノールが登場するようになりました。
現在、バロックオペラの演奏には不可欠な存在です。
*ファルセット[falsetto:伊]
「裏声」「仮声」と訳されます。男声の一番高い声区にあり、通常よりもさらに高音出す技法です。女性の音域カバーでき、カウンターテナーはこの唱法を駆使しています。
変声期前にソプラノの音域に恵まれた青少年男子の歌手について用いる語です。
なお変声期を過ぎても、ソプラノで歌い続けられる歌手も極めて稀ながら存在します。
Il canto dello stornello(1867).Silvestero Lega(1826-1895)